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剣の記憶/12

<帝都への帰還>

おれたちは全速力で帝都へ戻った。なんつーか、火だるまっていうの?こういうの。帝都はリターナーやらナルシェガードやらがうろちょろいて、帝国兵はそそくさと城の中に戻って行った。そいつらを蹴散らしつつケフカ様とおれは陛下に呼ばれて慌てて最上階にある謁見の間へ向かった。ここ、見はらしすんげぇいいんだけど、高所恐怖症の人にとっては拷問だろうな、陛下が高所恐怖症だったら謁見の間も近くて済んだのに。

「―――よくやった2人とも、だがこのありさまだ……おまえたちには責任を負わせることとなるだろう」

「…は、はい……」

おれたちが帝都に到着してすぐ、奴らもやってきた。そこでおれたちは監獄ライフの始まりだ。なんでも、彼らと和解し、おれたちは牢へ閉じ込めるんだとか。おいおいそりゃないぜ、確かにドマを毒で沈めたのもケフカ様だし、おれは雑用係だから色んな事を手伝っている訳で……

「おら、入ってろ」

「っぐ……」

「おいそりゃないぜ」

汚れ仕事は全部おれらにまかせて、自分は罪から逃げようってか?そうはさせねぇぜ皇帝。ケフカが牢に閉じ込められたという大ニュースはすぐさま広がり、無論雑用係のおれが閉じ込められたのも今や有名な話。ただ、ケフカ様とちがっておれはそれなりに人望があったのか(一部の元上司達を除く)励ましの言葉や、おれに対しては刑を取り下げてもらうように頼んでくれたらしい。っく、まったく泣かせやがるぜ。それをつまらなさそうに見つめるケフカ様。あ、怒ってる、今絶対に怒ってる。でも勘弁してくださいね、今暴れるのは。おれいま剣持ってませんから。

「随分……人望が厚いようだねぇ?」

「なんていうんですかね、仁徳ってやつですかね?」

「っけ、つまらん!」

「……そういうと思いましたよ」

「お前はガストラ様から許しが出れば、ここから出てのうのうと生活するつもりかい?」

「いいえ出ませんよ、彼らの気持ちは嬉しいっすけど、まぁ、おれもケフカ様と同じでやることはやってますから……」

「ふん、お前のそういうところは嫌いじゃない」

「お、それは部下としておれを好いているということですか?」

「誰が屑のお前なんかを!まったく、どいつもこいつも突然態度を変えやがって…」

「そりゃぁ、ケフカ様、あなたがいけないんすよ」

「なんだと?!この俺が!?どこがだ!」

「……ほらほら、それっすよ、すぐ怒鳴り散らすところ」

「なんだと?!」

「うわ、痛いですっていててっ」

「こら静かにしろ!お前たちは仮にも囚人だ」

助かったよ、ありがとな。おれは心の中で牢番の兵士に感謝しつつ、おれはイライラしているケフカ様からちょっと離れた。ちなみにおれたちは別々の牢屋にいれられていてケフカ様は入って左側の、俺は右側だ……いや、どうでもいいことか、これ。

「けっ!どいつもこいつもなんで俺がこんなところに入れられるんだ!! カーッ!

シンジラレナーイ!!」

「……つまらん」

「そりゃ、つまらないですよねここ、何の遊具もないし」

「ならお前が相手をしろ、今から殴り飛ばしてやる」

「ちょっとケフカ様、おれサンドバックじゃないっすよ!?誰かいきますかって」

「カーッ!」

「……おっと、大きな烏ですねぇ」

「お前人の上げ足ばかり取るな!雑用係のくせに!」

「ケフカ様のくせに!上司思いなおれを察してないだなんて!」

「上司思いならここから出せってんだ!」

「そればかりは……」

言い争いをしていると、黒髪の男がやってきた。男はケフカを見つけるなりものすごい形相で食いかかり、何故ドマを…と散々怒鳴り散らした。どうやらこの方は滅ぼされたドマの方で、お怒りがピークに達しているようだ。おれはそれを遠くから眺めつつ(だっておれ、それには関わってないもんな)入り口を過ぎて行く彼らの姿を見つめる。

彼らがここを出てしばらく、おれたちはどういう訳だか檻から出された。おれ、いまから寝ようとしてたんだけどな。

「……2人にはある任務を任せる」

ほんと、この人って帝国の皇帝なだけあって、すんげぇ腹黒いし、策士だよな。彼らに幻獣を追わせ、和解させその隙を見て幻獣を魔石化させるというわけだ。レオ将軍とセリスは和解の代表としてそちらに向かっているようで、ケフカ様はタイミングを見計らって彼らを囲い込む。おれは城の警備が手薄になっているため(こう見えても貴重な人材だからな、エッヘン!)城に残ることとなった。だが、正直……おれ、ここに残っていないほうがよかったと思ったよ。かなりショックな出来事が起こった。ケフカ様は上機嫌だったけど、知らされた事実におれは驚愕した。今までにないショックを受けた。ぶっちゃけ、涙さえも流れなかった自分が腹立たしい。軍隊にいる以上、誰かが死ぬのは当たり前で、それが自分の親友であったり、大変世話になった上司であり……

「名前……」

「なぁおれ、どうして涙が出ないんだろ」

「……胸は貸してやるよ」

「……ありがとな……おれ、あの人だけは、絶対にないと思ってたんだ……」

「あぁ、わかるよ―――おまえの気持、あの人、お前によくしてくれたもんな、倒れれば病室まできてくれたし、親の墓参りも一緒にきてくれたもんな」

「あぁ………おれ、両親が死んだ時、すんごく悲しかったんだ、涙も流したし、でもさ、両親のばあい年だったからさ、死期が近づいていたのは分かっていたんだ、覚悟をしていたんだ、だからそこまで精神的ショックは無かったんだよ」

「……あぁ、そうだな」

「なんだけどよ、今回ばかりは、ちょっと…さぁ」

自分の声が揺れているのにも関わらず、おれは吐きだし始めた。あの人が死んだなんて、信じられなかったし、信じたくも無かった。初めは幻獣に襲われ殺されたと聞いたが、あとから仲間内から聞いた話では、大分内容が違った。

「おれ……おれ……ケフカ様がわかんねぇよ」

「……おまえはよくやったよ、本当に、もうお前頑張りすぎだ、そろそろ休め、なぁ?」

「そうだぞ、お前はケフカにどうこう言える立場だ、言ってやれ」

ケフカ様にそれを言ったところで、何かが変わる訳でもない。将軍は、レオ将軍は死んでしまった。それで死人が生き返るなら、なんだってする。だが、死人を生き返らせる方法なんてない。

現実は無情だ、なぁ、ハロワのお姉さん、おれにこんなきっつい試練を与えたあなたは一体何者?いいやお姉さんのせいじゃない…すべて、おれが選らんだ道。おれがあの時、ケフカ様を止められれば良かったんだ、きっとおれのせいだ……ケフカ様の力は今やおれ以上、だから、止められなかったとしても最悪の事態だけは回避できたはずだ。

でも、おれはケフカ様を心の底から憎めいない、悔しいことに、おれは一度あの人に命を助けられている。理由がどうであれ、あの人はおれを助けたんだ……それに、散々暴言を吐かれたが、悪くはないかなって思った時もある、けしておれがMな訳ではなくてだなぁ…ともかく、おれはケフカ様を心の底から憎むことはできない。おれ、どうしたらいいんだろう、レオ将軍、おれどうしたらいいっすか。

「……ガストラ様が魔封壁に向かわれるそうだ、名前隊長」

「―――分かってるよ、行けばいいんだろう」

「いいや、我々はここに残って国の警備らしいです」

「…そっか」

気を使わせちゃったかな?あの人のことだ、そんなこと絶対にありえない。陛下はケフカ様を連れ、魔封壁に出発していった。おれは幻獣達に襲撃され生き残った部下たちの確認をし、一度集合させた。おれも手慣れたもんだよな。

「そっか…随分減ったな」

「ほかは…全員」

「そうか、まぁいいよ、おれたちはラッキーだった、ただそれだけだ、せっかく生き残ったんだ、その命を無駄にするなよ」

「…はい!」

幻獣の力ってのは恐ろしいな……陛下もケフカ様も、レオ将軍もセリスもいない、おれがここのトップというわけだ。だから、悲しみに明け暮れている暇なんてないのさ。こいつらも同じ境遇なんだからさ、でもショックだよな、レオ将軍がケフカ様に殺されちまうなんてさ。

「ケフカの野郎…俺は絶対にゆるさねぇ…!」

「あぁ、あの優しかったレオ将軍を殺し……!」

「名前隊長、いくらあなたでも、ケフカを許せますか!?」

「……おれは、言葉には上手く言い表せないんだ……ごめんな」

「あなたもレオ将軍の世話になった身、あなたは辛くないのですか、怒りを感じないのですか、そこまでケフカに染まっているのですか!?」

「薄情者…!」

彼らが言いたいことは分かる。おれは確かに薄情者なのかもしれない。心の底から、ケフカ様を憎めないだなんてさ。

「おい止めろお前達!薄情者はお前たちだ」

「…なんだと!?」

「よせってロウェル」

「お前がよせといっても、上司だからと言っても俺は言うのをやめないぞ」

「あぁそうだとも、お前たちは名前のことをなんも理解しちゃいない」

「だからよせって!」

「黙っていろ名前!」

「…は、はい……」

うわ、すんげぇ気迫……流石はセリスの元部下、じゃなくって。こりゃまずいぞ。

「一番辛いのは名前だ、ケフカのことを散々愚痴っていたが、ケフカに一番近くにいたのはこいつなんだ、その名前の気持ちを察することも出来ないのか?」

散々愚痴ってたは、そのすんごく余計ですよオットー君。

「レオ将軍の元に少ない期間だが、いたんだ、レオ将軍の死が辛くない訳ないだろう!」

「言い方は悪いかもしれないが、死んでしまった以上俺達人間にはどうすることもできない!今出来ること考えろ!今、名前に同じ悲しみをぶつけたところで何になるっていうんだ!?俺達は帝国の兵士だ!守るべきものは、まだあるんじゃないのか?」

ほんと…すごすぎて言葉がでないや。おれが上司よりもこいつら2人が上司になったほうがいいんじゃないか?おれ、あまりの感動に今度こそ涙が流せそうな気がする。2人はおれの代わりに兵士たちを励ましてくれた、やはり、持つべきものは友だな。

「―――ならば我々はどうしろと!」

「ここを守るんだ!負傷した者を救え、敵だった者であろうとも、今は仲間だ!」

ロウェル達のおかげで彼らを再び奮い立たせることができた。おれは帝都での指示をすべてロウェル達にまかせ、城内に戻りレオ将軍の身の回りの物を整理することにした。外はあいつらが上手くやってくれる、おれなんかよりも遥か上手に。

「……レオ将軍の鎧かぁ…まぁ、大切な遺品だよな」

試しに来てみたが、サイズはちょっと大きめだったが背は近いので着れないこともない。そうだ、せめてレオ将軍の意思をわすれないよう、これを身につけることにしよう。グリーンのインナーに着替え、鎧を纏うとレオ将軍が戻ってきたような気がした。この緑色のコート、レオ将軍愛着してたよな……グリーンはレオ将軍のカラーだもんな……

「れ、レオ将軍…!?」

「残念おれでした」

「その服は……」

「あぁ、せめてレオ将軍の意思は継いでおこうと思って」

「……先ほどは失礼いたしました、名前隊長の気持ちも知らないで……そうですよね、みな、辛いのは同じですよね」

「…いいんだよ、気にしてないし、確かにおれは薄情者かもしれない、ケフカ様にいわれりゃ誰であろうとも殺していたし」

「……ですが、あなたはケフカとは違う」

「そうだな、おれは名前・アデルバートだからな」

「いえ、そう言う意味では……」

「もういいだろ、お前顔が疲れているぞ、休んだらどう?」

「いえ、まだまだ働けます」

「まぁ、無理しすぎないようにな」

「はい」

この姿は兵士たちに好評で、どうやら彼らを元気づけるには十分すぎたようだ。だが2人が外に出てしばらく過ぎた頃、大地に異変が現れ始めた。突然大陸の一部が浮上してきたのだ。おれたちは近くに住む住人達に安全な場所に避難することを指示し、様子を窺った。もしかしたら、これからとんでもないことがはじまろうとしているのかもしれない。

Published in剣の記憶