Skip to content

滑降/07

<戦争と国々>

クルトは長い廊下を1人歩いていた。本来いるはずだったアッサムがいないこの長い道はとても静かだ。

「父上は何を考えていらっしゃるのだ…。」

アッサムが恂死したことには驚かされたが、まさかあの弟が死ぬとは思わなかった。これは自分が指示したことではない。いくらなんでも、アッサムにそんな危険な任務は与えないはずだ。だが、何故アッサムはカイザーを殺した?
クルトはあの戦いから報告書の処理に追われていたが、ある報告書で目がとまった。それは極秘内容でアッサムが王から直接命令を受けていたことだ。書類には王子である自分のサインもしっかりされている。筆跡も全く同じで。

「おかしい…こんな報告書、目を通したことがない…サインをした覚えも…」

疲れているのだろうか。アッサムがいないと、仕事もいつも以上に大変だ。クルトは給仕が運んできたコーヒーを一口飲む。

「…ん、豆を変えたのか?」

「いいえ、アッサム様と同じ豆と淹れ方をしているのですが…」

「そうか…」

いつも飲んでいたコーヒーはアッサムが淹れてくれたものだ。淹れる人間が違うだけでこうも味が違うとは。もう二度と、アッサムのコーヒーを飲むことはできないのか。
再び報告書に目を通すと、不可思議な点をいくつか発見した。まずは、あの姉弟の配置図だ。出発直前に変更されているではないか。これにも自分の筆跡でしっかりとサインがしてある。奴らは真夜中に奇襲に合ったと聞いた。あの姉弟の部下たちも多く死に…まてよ、他の隊の者が死んでいないのは何故だ?何故、あの姉弟の隊だけが全員死んでいるのだ?
クルトは妙な寒気を感じた。まさか、父上がこれを指示なさったのだろうか……あの姉弟が邪魔だというのならば、姉も殺していたはずだ。しかし、弟だけが死に、姉が生き残った。あの姉と随分仲の良かったアッサムも死んだ……。
気がつけば部屋を出、王室へ駆けていた。マントを翻し、部下たちの礼にも目もくれずクルトは急いだ。重たい扉の前には黒い覆面をした男か女かもわからない奴らが立っていた。こいつらは代々クラウン家に仕えている不気味な奴らだ。こいつらがここにいると言うことは、ベン殿も中にいるということ。

「父上に用があって参った、扉を開けろ。」

「…」

「―――もう一度言う、扉を開けろ…」

しかし、奴らが動く事は無い。奴らはベン・クラウンの命令だけを聞くロボットのような存在。今すぐにでもこの事を確かめなくては、とクルトは重たい扉を1人で開くことにした。いくら鍛錬してあるとはいえども、この扉は通常男3人がかりで開けなくては開かぬ扉だ。

「…クルト、何しにやって参った、今ベンと話をしている最中だぞ。」

「……父上……恐れながら、確認したいことがあります。」

「おやおや、お仕事のお話かい?じゃぁ僕は抜けるよ…またあとでね。」

「あぁ―――すまんな。」

ベンはクルトの片手にある書類を見て思ったのか、重たい扉の外にいる部下たちを引き連れ研究所に戻って行った。二人きりになったことを確認すると、クルトは父の前に書類を広げる。

「父上、この報告書にはいくつかの不可思議な点があります、まず、カイザーを殺すことを父上がアッサムに直接命令したこと、次にあのクラウン姉弟の配置図です…出発直前に変えられております、そして――――死んだ兵の事ですが、クラウン姉弟の隊の者のみ、死んでおります…それと、アッサムの隊も……これは、どういうことでしょうか。」

「っふ、流石は我が息子…そのことに気がつきおったか…」

やはり、父上の陰謀だったのか。何故こんなことをたくらむのだろう…!怒りで声が震える。

「父上…まさか、あのベン殿に…指示されたのでないですか…」

これが一番聞きたかった事だ。陰でマティウスの王を操っていると噂されているクラウン家当主、ベン・クラウンが本当に父を操っているのかどうか。返事次第では、自分はベン・クラウンを殺しにいかなければならないだろう。

「ふん、我が息子はそんなことを心配していたのか?確かに奴はわしに色んな事を言ってくるが、それを全て鵜呑みにしていると思うか?次期王としてお前に教えておかなければならんだろう、マティウスの王家とクラウン家の血みどろの関係を…」

「血みどろの…関係、ですか…」

時をさかのぼることマティウス創成期。水中の中でも生活ができる画期的装置『マティウス』の名の由来である発明家マティウス・キングと、その後生物研究でマティウスの守護者『クラーケン』の名の由来である科学者クラーケン・クラウンの関係。彼らは血は繋がっていなくとも、実の兄弟のように仲がよかった。水中都市国家マティウスが誕生し、マティウス・キングが王の座に座った時彼はクラーケンにクラウン家が未来永劫、地位名誉と研究を続けられる事を保障した。クラーケン・クラウンが死に、息子が後を継いだ頃、マティウス・キングも死去する。彼の息子の代から、この二つの家の関係が変化していく。二代目国王は血を重んじ、後継者は絶対的に王族だと言い張り、二代目クラウン家当主は実力さえあればどんな地位にでも這い上がれると言い張る。この衝突がその後何百年と続き、いつの時代からか王家とクラウン家の血が混ざり合うようになる。そこから表向きの衝突は少なくなっていったのだ。

「この争いの中、何人もの王家とクラウン家が互いに血を流しあった。だが、それが外に漏れることはなかった…何故だと思う?」

「それは…」

「王家が他所にマティウスの情報が漏れ、他の国に隙を見せることを恐れた。」

「……もしかして、父上はベン殿と対立なさっておられるのですか…?」

「お前だけには教えるが、一言でまとめるとそんなようなものだ。わしが王座に即位したときから、ベンとは常ににらみ合ってきた。なんといっても、このわしは帝国出身の者。即位してすぐに元老院達が暴動を起こした。しかし、ベンだけは王の右腕であるクラウン家として振る舞った。それのおかげもあり暴動は早々に決着した。ベンにとって国内の暴動は研究の邪魔でしかないからな。早急に騒ぎの種を解消しておきたかったのだろう。奴はクラウン家の中でも変わった人間だった…悪魔の研究に取り付かれたと言っても過言ではないだろう。奴は人が入るべきではない領域に足を踏み入れ過ぎている。」

あの姉弟や、ゾディアーク兵、ゾンビ兵を見てもそれは思うことだ。あの男は実の娘たちですら作品扱いなのだから。

「奴は便利な兵器を常に開発し続けてくれるが、王家の為にそれをやっているのではない。己の欲望を満たすためだ……だからよく覚えておけ、ベンは国の為に研究を続けているのではないということを。あの娘を見ていて思ったよ、もっと危険な化け物が生まれるんじゃないかとな。」

クルトはベン・クラウンに父が従事しているのではない事実だけでもうれしかった。だが、まだまだ疑問の種は山積みだ。

「あのカイザーを殺させたのはわしの命令だ。奴の存在は危険だ…近年では、姉の名前よりも力をつけてきたという。ましてやあの男は魔法が全く効かないというではないか…もしあの男が、反乱でもおこし、王家を翻そうとしたらどうする?」

「ですが、名前・クラウンもそれをやろうとは考えないのですか。」

「あやつは所詮女だ…女の力など、たかが知れている。カイザー・クラウンに致命傷を与えたのは古来より王家に仕えてきた暗黒の存在――――」

まさか、その名を聞くことになろうとは。ここ100年は彼らが動いたことはなかったと聞く。彼らが動くと言うことは、父上はこれからとんでもない事をしようとしているのだろうか。

「暗黒部隊…」

「よく知っているな。そうだ…暗黒部隊に襲わせた…奴らは古来より不思議な術を使う…いくら化け物並みの生命力であるカイザー・クラウンといえど、古来より伝わる毒には敵わなかったようだな。この毒は代々王にしか受け継がれない。故に奴はこの毒の存在を知らん……毒で弱まっているあの男を殺すことなぞ、アッサムでもたやすくできた。あの男の尊い犠牲を無駄にしない為にも…クルトよ、クラウン家を完璧に掌握するため、あの名前・クラウンを妃に取れ。あの娘は正真正銘、ベン・クラウンの娘だ…そして、あの娘の体には過去に混じり合ったマティウス王の血が流れている……」

名前・クラウンを…?確かにそうすればクラウン家は王家が掌握したも同然。クラウン家を取り込んだとすれば、反勢力も姿を見せなくなるだろうし、地位を脅かされると言う心配もする必要がなくなる。しかしクルトは考える。長年嫌みなどを言い続けていた相手を突然妃にするなんて。

「明日、凱旋パレードが行われる。名前・クラウンは大将軍に昇格、お前の隣の席となる。」

「…父上、ひとつ、よろしいでしょうか。」

「何だ。」

「―――父上は、何をお望みなのでしょうか…」

沈黙が続き、クルトはしばらく父王と見つめ合う。

「そんなもの、優秀なお前なら分かっていると思っていたが…」

全ては、我が一族が繁栄するため。クラウン家が代々築き上げてきた神をも凌駕する研究結果を、我がものとする為。

あぁ、この人は生まれた時から、王の素質を持って生まれたんだ。クルトは改めて、父の恐ろしさ、貪欲さを思い知った。実の息子である自分でも、この人には敵わないだろう。クルトは再び元来た廊下を1人歩く。アッサムが生きていれば、相談もできたのだが…。
善政で民から慕われているマティウス国王、グスタフの裏の顔を知るのはクルトとベン・クラウンだけ。光の中に潜む闇、自分も…その闇に飲み込まれてしまうのだろうか。しかし、父王の命令は絶対だ。翌日のパレードでクルトは早速、言われた通り名前に求婚を申し出た。予想外の反応が返ってきたが、今までしてきた仕打ちを考えるとそう考えてもなんら不思議ではない。

「…私はどうすればいいのだ…アッサム…君が生きていてくれれば…」

孤独な王子は、世界一平和だと謡われている国の闇を知り、葛藤する。アッサムが生前言っていた、クラウン家に関わるべきではないと。今なら言えるだろう、アッサムの言うとおりだったと。しかし、もう後戻りはできない。父王が言う事も一理あるが、これでは自分も名前・クラウン同様、父の操り人形でしかないのではないだろうか。
あの事件以来、名前の国に対する不信は強くなっていった。その日からだろう、自分を偽るようになったのは。自分の素をさらけ出せるのは、あの男と会ったときだけ。
名前は国中の貴族から婚約祝いの品を運ぶ兵士たちを何度魔法で焼き殺そうとしたことか。あの日から4年が過ぎた今でも絶えず祝いの品はやってくる。それは、まだ婚約を承認していないからだ。自分が一般の家の出身ならば、強制的に婚約していただろうが、自分はクラウン家の一人娘だ。改めて自分の家の地位に感謝した。
現在、地上ではドマと帝国の小競り合いが始まっている。ドマの間者が何度もマティウスに訪れ、同盟を持ちかけるがクルトはそれをはねのけている。仮にも帝国と同盟を組んでいるのだ、帝国と敵対するのはまだ機ではないと判断したためである。

「名前将軍、帝国からお呼びの声が掛かっています。」

「ふうん?どうせドマの事でしょ?ドマさせ手に入れば、マティウスまで一直線だし、貿易の航路も支配できるからね…。」

下らない兄弟喧嘩にいつまで巻き込まれればいいのやら。
今や、帝国と肩を並べられる国はマティウス以外存在しない。その両国は同じ血の流れる兄弟達が支配しているんだから、おかしな話だ。

「どうしてわたしが呼ばれるわけ?あの王子はどうなのよ。」

「はい、ただいま王子は内政に追われておりまして…。」

帝国が他国を随分と侵略してくれたおかげでマティウスに移ろうとする貴族や民が増えてきたのだ。クルトはそれの手続きに追われている。帝国が力をつければ付けるほど、マティウスの人口は増え此方の勢力も強まる。最終的には、陸と水中との2大勢力に世界が分裂するのではないかと考えてしまう程だ。ドマに住まう貴族も複数名、マティウスに移民を希望している。最近はリターナーとかいう組織の動きが活発になり、マティウスに度々訪れる。まぁ、所詮弱小勢力なので、適当にあしらうのが常だ。

「ったく、使えないわね。」

今や、大将軍である名前を咎められるのは最高権力者である国王と、ベン・クラウンだけだろう。あの日から名前は王子と対立するようになったし、そのせいで国内の裏事情も変わってきた。リターナー側は名前に交渉しようと何度も持ちかけてくる始末。名前ならば、味方になってくれるとでも思っているのだろうか。
水中馬車に乗り込み、名前は地上へ向かう。地上へ向かう際も数名の部下しか連れて行かない。何故かと言うと、途中で名前の怒りに触れ重傷を負う兵士が大勢いるからだ。これのことに対して一切咎められないのはクラウン家であることと、王子が名前を気に行っているという話が流れているからだ。名前の傲慢さはこれだけにとどまらず、王子との食事会すら何度もドタキャンしている。
王は王子と名前の事を、王子に全て投げ出し別件で忙しかったし、ベン・クラウンに至っては論外だ。兵士たちの名前に対する感情は言うまでもないだろう。
この間だって、城の横を歩いていただけで兵士に小声で悪口を言われる。もちろん聞き逃さなかった名前はその兵士を禁固刑に処した。名前の評判は下がる一方、しかし立場上逆らうこともできない存在。次第に名前は全員の兵に対して刑を処すのが面倒になり、最近では放置している。ただ気が向けば刑を与えたりする、そんなところだ。

「おや、ようやくいらっしゃったんですか、名前大将軍?」

「これはこれ、ケフカ殿、お久しぶりですね。」

帝都ベクタでは皇帝であるガストラとケフカ、それとレオ将軍が待ち構えていた。ちなみに部下たちは全員外で待機している。

「今回の用件は何だ?ドマのことか?こちらとしては全然構わないがな…貴様ら帝国が他国を支配すればするほど、我が国の勢力は増えていく。そうすれば、あっという間に帝国なんぞ潰れてしまうだろうな?」

「それはそれは、面白い。でもいいのか?ドマを失えば、お前たちの貿易航路も何もかもが帝国の手中だ。」

「でしょうね、でも、此方もまだ奥の手があるわよ?」

「ふん、強がりか?」

「強がり?何故強がらなくてはならない?」

同盟を組んでいる仲だとしても、帝国とマティウスが真の意味で手を組むことはない。他国はそれを知っている。もちろん、ドマの国王だってそのことに気が付いている。だからマティウスに同盟を持ちかけているのだ。

「知っているんだぞ、ドマが現在、マティウスに同盟を持ちかけていると。」

「だったら何?」

たったこれだけの為に呼ばれた訳ではないだろう。名前は薄々感づいていた。

「―――ところで名前大将軍、君に重要な話がありここへ呼んだ…」

この白い髭をたくさん生やした男こそ、マティウスの王グスタフの実の兄、ガストラ。異母兄弟なのもあってあまり外見は似ていない。

「我が帝国に、魔導の力を復活させるきっかけを与えてくれたのは君だ、最近君がマティウスに不信を抱いていると風のうわさで聞いたことがある…どうだね、帝国に下るつもりはないか。地位も名誉も保証しよう。」

やっぱりこれが目的だったのね。名前はガストラを小さく睨む。
こいつらとの戦いさえなければ、カイザーは死ななかったのだ。誰が帝国なんぞに下るものか。わたしはもう、誰かの駒でありたくない。誰からも、支配されない。

「この事が王子に伝われば、同盟は亀裂するだろう。」

「別に構わん。あの愚弟から優秀な人材であるお前を引き抜くための機会を見計らう為に同盟を組んだのだからな。お前が来ないのならば、ベン・クラウンに直接交渉に行けばいいだけのこと…」

こいつの目的は大体わかる。おとうさまの研究成果を奪おうとしているのだ。おとうさまが今、何をしようとしているのかわたしにもわからないが、日々増えていく墓を見るところからして、新たな人工魔導士の制作といったところか。

「お前の野心は見え透いているな…人工魔導士の研究は、帝国でも行っているんでしょう?何故今さらマティウスのそれを欲しがる?」

「っふ…ベン・クラウンはマティウス一の謎であり闇である。あの男を引き込めればあんな水中のくになどすぐに滅ぶ。それには実の娘であるお前という存在が必要なのだよ。」

魔導の力に踊らされた憐れな男がもう一人いたか。名前は冷めた目でガストラを見る。ケフカに至っては何が面白のか、口に手を当てくすくすと笑っている。

「いいの?皇帝であるあなたがそんな裏事情をばらしちゃっても?わたしはマティウスの大将軍よ?」

「ふん…利口なお前ならば考えるはずだ、どちらにつくべきか。」

話はそれ以上発展することはなかった。癪だったが、名前はこの事を上の誰にも伝えるつもりはない。例え、父親であるベン・クラウンに求められても話すものか。確かに帝国はマティウスよりかは幾分マシかもしれないが、帝国がカイザーの死のきっかけを作った。あの兄弟の手駒になるなんてまっぴらごめんだ。
名前はマントを翻し、玉座を後にする。隣には見送り人としてケフカがついている。

「…随分とお疲れの様子だねぇ?」

「そりゃそうよ、ここまで距離があるんだから…急いできて損をしたわ、あんな下らない話を聞かされるだけに呼ばれたなんて。」

「フッフッフ…面白い話は他にもあるぞ、実は先日ある実験が成功してな…皇帝が以前連れ帰った生まれながらにして魔導の力を持った小娘、あいつを操ることに成功したんだ。」

それは初耳だ。いや、単にわたしが聞いてないだけかもしれない。おとうさまはとっくの昔に知ってるだろう。

「ふうん…それで?」

「生まれながらにして魔導の力を持った小娘だ…名前、お前より強いんじゃないの?」

「まさかこのわたしがそんな小娘よりも弱いかだって?一戦交えればわかることよ。」

操ったということは、帝国が最近発明したという操りの輪とかいうやつか。その娘の哀れだな、魔導の力を利用され、その上自分が操られているという自覚もないのだから。
まるで…昔の自分のようで気に食わない。その娘に会ったら張り倒してやりたいくらいだ。そんな小道具で操られやがってと。

「いつでも俺はお前を歓迎するよ、帝国に下りたくなれば、直接俺に声をかければいい。」

「―――っは、誰が下るって言った?どいつもこいつも、わたしを道具としか見ていない…不快ね。」

「お前はいつまでも、ベン・クラウンの人形でいるつもりなのかい?」

「――――違うわ」

わたしはもう、誰にも支配されない。そう決めたんだ…
わたしはもう、人形なんかじゃない。それに、おとうさまは新しい作品に精を出しているようだし…わたしのことなんて、もう目もくれないだろう。
わたしはわたしの為だけに存在する。この力も、わたしの為だけにあるべきなのよ。
名前はケフカを振り返ろうともせず船に乗り込む。次会うときは、敵同士かもしれないわね。

「さっさと船を出して。帝都なんて、胸糞悪い。」

「はいっ、ただいまっ…!」

兵士たちは己の命の危機を感じ、慌てて出航する。3日もすればあっという間にマティウスだ。いつしか、自分の本当の居場所を、自分の手で見つけることができるだろうか。

ドマがマティウスに助けを求めにやってきたが、グスタフはそれを受け入れなかった。今ドマと同盟を結べば、帝国との関係がさらに悪化し戦争が再び起きる事を懸念したためである。それにはクルトも同意見で、今はまだ帝国とたたかうときではないと見ている。

Published in滑降