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星のこども/04

<王墓>

朝になり、昔の王様のお墓へ行っていたノクト達が砂埃まみれになりながら帰ってきた。なんでも、昔の王様の力を手に入れる為らしい。戻ってきて早々、休む間もなくノクト達はコル将軍に言われ、帝国が基地を作ろうとしている西のダスカ地方へ繋がる道に向かう事となった。ここが塞がれば、西への道が閉ざされてしまう。それは、ノクト達にとって大きな痛手となる。

彼らが薬を補充している間、ヴィクトリアは彼らの車にいくつかの食料を積みながら意外な言葉を名前にかけた。

「名前、貴女もノクティス王子の旅に同行しなさい」
「えっ、お母さん、それ、本気?私なんかが一緒にいていい旅なの…?」
「王子には、サポートが必要よ。ただでさえ危険な旅だというのに、従者は3人…もう1人ぐらいいたほうが安全だとあの人も言っていたわ」

彼女の言うあの人とは、コル将軍の事だ。ちなみに、ヴィクトリアとコルは昔から親しく、色々と噂の絶えない2人だったらしい。一人旅を初めて偶然ノクト達と出会い、その繋がりでいろんな人と出会ったが不思議とみんなつながっていて。不思議な縁もあるものだ。

「王子を、支えてあげなさい」
「……私、一般市民だよ…そんな事できないよ…それに、強くなるために旅に出たのに…」
「貴女にしかできないことはあるわ、それに、王子たちと一緒に旅をすれば、きっと貴女も強くなれる」

母のこの自信はどこから来るものなのだろうか。まぁ、将軍も是非というのであれば無理に離れる必要もない。そういえばプロンプトも一般市民だと言っていたのを名前は思い出した。

「…あのね、本当は、一緒にもっと居てみたいなぁ、って思ってたんだ」
「……そうするといいわ、でも、辛くなったらいつでも戻ってきていいのよ、貴女はね」

微笑みながら、ヴィクトリアはやさしい手つきで名前の頬を撫でる。それが心地よくて、名前もふわりと笑った。

「辛くなることなんてあるのかな?」
「…あるわ、沢山、でも、だからこそ生きているのよ」

母の言葉に名前は首を傾げる。
でも、いつかこの子も気が付くはずだ。この言葉の意味を。母として、娘の成長を楽しみに思いながらもどこか寂しさを感じてしまうのはきっと、気のせいではないだろう。ヴィクトリアは最後に、名前の額に優しくキスを落とした。

「これからも、貴女の長い、長い物語を綴っていきなさい」

そう言い残すと、ヴィクトリアは相棒の大剣を背中に背負い次の仕事があるから、と旅立ってしまった。何となく、暫く母と会えなくなるのだろう、そんな予感がする。
そして、正式に旅に同行することが決まり、レガリアで次の目的地である西のダスカ地方へ向かっている最中、ある事に気が付く。
…あ、私が日記書いてること、言ったっけ?

「…話を聞いているか、名前」
「あ、うん…!ごめん、ちょっと上の空だった…」

建設途中の基地を潰すための作戦をイグニスが話していたのだが、ついぼーっとしてしまい話を聞きそびれてしまった。

「おいイグニス、名前ちゃんいじめるなよな」
「…だが、この旅に加わるという事は、そういう事だろう」
「まぁそうだな、年も性別も関係ねぇ、コル将軍も何か訳があって名前を旅に同行させたんだろ」

正直のところ、何故コル将軍が名前をこの旅に同行させると言い出したのかが彼らもよくわかってはいない。4人の中で、ヴィクトリアって実はすごい人なのでは…説が浮上しているが、これも謎のままだ。
ノクトとグラディオに挟まれてちょこんと座っている名前は、ごめんと小さく笑いイグニスの話を待った。

「名前、君の得意分野は何かあるか」
「私の得意分野…盛り上げ役なら任せて!」
「んじゃ、頼んだわ」
「オッケーノクト!」
「こちらは真面目な話をしているんだが…まぁいいか、旅の中で役割を決めればいいだろう……」

どうやら、イグニスは正式に旅に加わることになった名前の力量を測りたいようだ。参謀として、当然の事ではあるがノクトやプロンプト、そして名前はよくわかっていない様子に、ふたりは視線を合わせ、はぁ、とため息を吐いた。
車で走る事1時間、西ダスカ地方の封鎖線にたどり着いた一行は、先に到着していたモニカに作戦の内容を聞き、二手に分かれる事となった。とは言え、野獣との戦いに慣れている名前ではあるが、帝国の魔導兵との戦いは生まれて初めての事。場所が場所なので、コル将軍とノクトのサポートをすることとなった。

「…いいか、君は我々が敵をせん滅した後、ついてくるんだ」
「はい」
「お前レガリアで待ってた方がいいんじゃねぇのか」
「大丈夫!多分!」
「多分じゃ困るっつーの」
「おしゃべりはそこまでにしておけ、行くぞ」
「はいはい…」

あまり得意ではないが、弓だけでは心もとないので、とコルから手渡された短剣がしっかりと腰のホルダーに入っていることを確認し、名前は二人の後を追う。敷地内に入るなり、魔導兵が襲い掛かってきた。コルとノクトは流石に手慣れた様子で敵を倒していく中、名前は生まれて初めての恐怖を感じていた。割と気軽な気持ちでこの旅に同行した自分がいかに愚かだったのかを思い知らされ、敵の銃弾を避けながら名前は母の言葉を思い出す。

「…生きなきゃ」

見習いハンターとして、魔獣は幾度と倒したことがあるが、人を殺すための兵器を相手にしたことはなかった。野獣と戦う時とは違う、殺意に似た何か。それが何なのかはわからないが、それを向けられ心地よいはずがなかった。

Published in星のこども