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星のこども/08

<シガイの声>

翌朝、外出を禁じられた名前はホテルの一室で退屈そうにごろごろと横になっていた。イリスとノクトはレスタルム散策中だし、イグニスたちはタルコットとジャレッドとどこかへ行ってしまった。部屋を絶対に出ないように、と言われているので仕方なく部屋に籠っているが、一人でカードゲームをするにも面白くない。やる事と言えば、身体がなまらないよう筋トレをするぐらいだろうか。
暇つぶしに筋トレを初めて2時間過ぎた頃、ようやく仲間たちがそれぞれ戻ってきた。これからタルコットが調べてきてくれたこの街の伝説を頼りに、王の墓所らしきところへ向かう事となった。イリスは街でまた留守番をすることとなり、不服そうなイリスに見送られながらも一同はこの街から少し離れた場所にあるカルタイン大滝へ向かった。

「本当にこんなところに剣があるのかな…」
「あるから伝説になってるんじゃねぇのか」

レスタルムに伝わる伝説で、滝の裏側が洞窟になっていてその奥には抜けない剣があるらしい。王として歴代の王たちの力を借りるべく王の墓所を探さなければならないノクトにとっては良い知らせでもあった。

「ううう……みてよ、ミドガルズオルムだよあれ…」
「……奴と戦うのは危険だ、できる限り離れた場所から移動し、奴と戦わないようにしよう」

恐ろしい程に巨大な蛇の野獣が滝の入口の近くでうろうろとしている光景が目に入り、名前は恐怖のあまり硬直する。熟練のハンターですら手を焼く相手なので、今のノクト達では敵う筈がない。イグニスが上手い事敵があまりいない道を選んでくれたお蔭で強い野獣とは遭遇せず滝の洞窟にたどり着くことができた。

「…そういえば、ルナフレーナ様はご無事なんだよね?何で移動してるんだろ…」
「車…だろうか」
「車だと逃げるとき不便じゃないかな?もしかして、チョコボ、とかだったりして…」
「だが、どうして突然そのことが気になるんだ」
「うーん、ルナフレーナ様がご無事かもってイリスが言ってたじゃない?お母さんにも教えてあげられたらな、って思って」
「どうしてヴィクトリアさんの名前が出てくるんだ」
「お母さんの部屋に、若い頃のお母さんと、ルナフレーナ様が小さいときに一緒に撮った写真があったの。だから、ちょっと気になっただけ」

母の部屋にはいくつかの写真が飾られているが、その中でも豪華なフレームに飾られていた写真があったのでよく覚えていた。写真の裏には、ヴィクトリア、ルナフレーナと名前が記されていたのであれは間違いなくルナフレーナ様なのだろう。

「ヴィクトリアさんの出身は」
「そういえば、一度も聞いたことが無かった…」
「なんだそりゃ」
「本当よ、お母さんの事、よくわかっていたつもりだったけど意外と知らないものね…」
「お前の母さん、色んな奴と繋がってるな」
「うん…なんだか不思議」

途中まで談笑する余裕があったが、洞窟も中盤に差し掛かると足元が滑ったり隙間からシガイが飛び出してきたりと油断のならない状況になった為、一行は足元に気を付けながら戦闘に専念することとなった。

『ワタシノ…コドモヲ…カエシテ……』

恐ろしい姿をした、蛇のようなシガイが姿を現したときそのシガイから発せられた声なのだろうか、地を這うような声が響き渡ってきた。あのシガイは子供がいなくなってしまった可哀相なひとなのだろうか……いや、シガイに子供もなにも…。名前は弓が狙いやすいよう後ろに下がりながら考えを巡らせる。

「なんか、このシガイ…可哀相だね…」
「だが、早く倒さなければ先には進めない」
「う、うん……」

そもそも、シガイという存在をよく考えた事は無かった。この星に生きる生き物なのか、それとも名前が最も苦手とするオバケという存在なのか。

『ワタシノ…コドモ…シラナイ?』
「知らねぇよ」
「わ、ノクト言葉慎重に選んでよね!」
「はぁ?なんでだよ」
『ナラ…オマエタチヲ…ワタシノコドモニ…!』
「ほらー!」
「ッチ」

その言葉により凶暴になったシガイはノクトを我が子とするつもりでいるのか、長い体で距離をぐんぐんと縮めてきた。

『―――の、こどもよ』

戦っている最中、シガイの叫び声のようなものが聞こえていたが、それに混じって妙な男の声も聞こえてきた。もしかしてシガイの夫婦なのだろうか。名前は目の前のシガイに集中しつつも、慎重にその声を聞きとる。

『―――のこどもよ、―――生まれ変わる為……なれ…』

声が掠れていて、うまく聞き取ることができなかった。シガイの声にしては、敵意を感じさせない声ではあったが、聞いていて心地の良いものではなかった。なんとなく、高圧的な声だったような気もする。それからも、王の墓所近くまでずっとその声が続き、入口に戻った時ようやく静けさを取り戻した。

「……賑やかな洞窟だったね…」
「隙間からぬっと出てきたときはびっくりした…」

洞窟を出た頃には日が傾き、茜色の空が見えていたので一行はレスタルムへ戻る事となった。プロンプトと名前は洞窟でのシガイパラダイスに疲れ、レガリアがレスタルムにたどり着いても暫く降りることなく席でぐったりしていたが、イグニスに叩き起こされ、渋々車を出る2人。
ホテルに到着し、ドロドロの身体を綺麗にして髪も乾かぬまますぐに眠ってしまった名前は翌朝、盛大なくしゃみをしたのは言うまでもない。

「もう、こんなに長い髪なんだから、乾かさないと風邪引いちゃうじゃない」
「あはは……昨日は疲れてて…」
「足元がふらついている、今日はレガリアで留守番だな」
「ふ、ふあい…」

今日はカーテスの大皿へ向かう日。そもそも、何故カーテスの大皿へ向かうのかと言うと、ノクトが原因不明の頭痛に悩まされており、レスタルムで苦しんでいた時ちらりとカーテスの大皿が見えたそうだ。神話と並び立つルシス家の最後の1人であるノクトが意味もなく頭痛でカーテスの大皿を見たという訳がない。カーテスの大皿に、何かあるのかもしれない。そう考えたイグニスは取敢えずカーテスの大皿へ行ってみようと提案し、行くこととなった訳だが。しかし、帝国軍が入口を封鎖しているので入る方法を考える必要があった。

「どうする?行き方……」
「……チョコボで迂回し、岩を飛び越えるしかねぇだろ」
「ケガしそう…」
「お前はレガリアで留守番な」
「えっ、あ、はい…」

ノクトの言う通り、今日の名前は本調子ではない。足元はふらふらするし、あまり早い速度で歩けない。もしカーテスの大皿で何かあれば仲間たちは名前を庇いながら逃げることとなる。

「あ、私運転免許持ってないんだっ」
「その年じゃ当たり前だろ…いい、レガリアの中で待機しててくれ」
「うん、わかった」

昨日もいろんなことが起きた。きっと、今日もいろんなことが起こるんだろう。そんなことを考えながら、名前はくしゅんと、くしゃみをした。

Published in星のこども