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星のこども/25

<産みの母>

ラジオから流れるニュースがどれも暗いニュースばかりだったので、名前はビュッフェのスタッフにラジオを切るようお願いをした。
名前の隣には、上の空でコーヒーを飲むノクト。一時はどうなるかと思ったが、何とか引き離す事が出来たのでよしとしよう。名前はノクトの肩をつんつんと指で押す。

「…なんだ?」
「ノクト、あの指輪…もしかして、すんごく危ない物なんじゃない?」
「…わかるのか」
「なんとなく、重たい空気を感じるから…この指輪…ノクトの事を…呼んでる」
「―――俺を」
「でもね、着けるタイミングはノクトの自由だと思うよ」
「…なんか、わるいな」
「どうしたの、突然」
「…その、お前だって辛いだろ、まだ」
「―――そうだね、だから考えないようにしてる、だって、考えてたらまた星のこどもって何なんだろう~って頭ぐるぐるしちゃうでしょ?」
「そういやその件もあったな…」

ルナフレーナ様とヴィクトリアの2人に同じことを言われるなんて、妙だ。何らかの使命が名前を待っているのは間違いないだろうが、それが何なのか、そもそも星のこどもが何なのかヒントすら掴めずにいる。

「私を産んだお母さん、帝国の人間なんだって」
「―――マジか」
「うん、大マジ…お母さんが、教えてくれた。私を産んだお母さんは、私を産んで亡くなったらしいの…」
「でも、魔法を使えるなんて妙だな…お前を産んだ母さん、ルシスか、フルーレか…」

しかし、帝国の人間だとすればルシス家であることは絶対にないだろう。だとすれば、フルーレ家の血族が名前を産んだ母、という事になる。

「フルーレ家なら、もしかしたらって思うけれども、ノクトの親戚では流石に無いと思うよ」
「まぁそれもそうか」
「そもそもこれが魔法だとは限らないし…」

フルーレ家が使うのは、星の力で相手を治癒したりすることもできる。しかし、名前は自分自身は治癒できても、イグニスの例にあるように、他者は治癒することができない。

「魔法だろ、十分に」
「え、そうなの?」

ノクトの言葉に、名前は口をぽかんとさせる。

「ああ、俺が魔法を使う時とおんなじだ」
「へ…へぇ…」

本当に、ルシス家の血を引いているのだろうか。名前は暫く頭を抱えていると、ある考えにたどり着く。

「ねえ、もしかして魔導兵作ってるぐらいなんだから、帝国ってルシス家の魔法を疑似的に作れちゃったりしてるんじゃないかな」
「ありえねぇこともないか…」
「だから、もしかして私を産んだお母さんは帝国で魔法を使えるような何らかの施術を受けて―――」
「それならば魔法を使える奴がうじゃうじゃいる事になるだろ」
「そ、そうだけど…ほら、頭を働かせてみて!もし、その施術がごく一部の人にしか与えられていなかったりとか…」
「―――わからねえな、とりあえず、帝国に乗り込んでみりゃわかるだろ」
「まぁそうなんだけどさ…」

考えても謎は深まるばかりだ。色々と話をしているうちに、列車はカルタナティカに到着した。ここにやってきたのには理由がある。それは、カルタナティカの鉱山に王墓があると情報を得たからだ。イグニスを連れて行くかは口論になっていたが、彼の強い想いで同行することとなった。相変わらずつんけんどんなノクトと彼に腹を立てているグラディオのお蔭で空気は最悪だったので、名前はノクトの傍に、プロンプトはイグニスの傍にいることにした。

「足場最悪だね」
「気を付けろイグニス」
「ああ、すまない」

雨が降っている為、足場は最悪。杖で歩くイグニスにとって、とても危険な道だった。オルティシエでなんとか新しい旅服を手に入れた名前は、防水性の黒いハットにジャケットとハーフパンツ、そしてぬかるみでも安心のブーツを穿いているので転んでも安心だ。ちなみに例の黒いワンピースは戦いでかなり破れていたのもあり、嫌な思い出と共にオルティシエに捨ててきている。
戦闘はイグニスの補佐が無い為、基本的に当たって砕けろ作戦に出るしかなかった。その為ケガも多く、ポーションを多く消費してしまった。標に到着した頃には既に日も落ち、腹の虫も盛大に音を立てている。

「よし、じゃあこの私が料理を作るね!」
「すまない、頼んだ」
「この中でまともにできるのってイグニスと私だけだもんね…イグニスの料理には負けちゃうけど、こんな時だからこそ、スーパー元気になる料理作るね!」
「よっ、待ってました!」

食事の時ぐらい、元気になってもらいたいものだ。イグニスとプロンプトは名前の気遣いを察してか、明るく振舞ってくれたが例の2人だけが重たい空気の中、黙々と食事が行われているだけ。これには、3人とも小さくため息を吐いた。

「ねぇ、おいしいノクト?」
「―――あ?まあ…」
「そう、ならよかった、はい、温かいお茶…このお茶、疲れた時によく効くんだ」
「サンキュ」

イグニスの事もあり、ここまで来るのにうんと時間を費やしてしまった。だから、ノクトがこんなにもやつれた表情をしているのは仕方のないこと。
その夜、4人は泥だらけのまま死んだように眠った。

Published in星のこども